第1章 | 入口
試験の形と、周波数・波長
試験科目と合格基準、出題範囲、4アマの操作の範囲、λ=c/f、周波数帯の区分
この章で学ぶこと
- 第四級アマチュア無線技士(4アマ)の試験の形:科目・問題数・合格基準
- 出題範囲がどの法令で決まっているか
- 4アマで操作できる周波数と空中線電力(操作の範囲)
- 周波数と波長の関係 λ = c / f と、HF・VHF・UHF などの区分
1.1 4アマはどんな資格か
無線局の無線設備を操作するには、原則として無線従事者の免許が必要です。無線従事者の資格にはたくさんの種類があり、アマチュア無線の分野には第一級から第四級までのアマチュア無線技士があります。第四級アマチュア無線技士(以下「4アマ」)はその入口にあたる資格です。
ここで大事なのは、「人の免許」と「局の免許」は別ものだという点です。4アマは人(無線従事者)の資格で、実際に電波を出すには、これとは別に無線局(アマチュア局)の免許を受ける必要があります。局の免許については第12章で、無線従事者の免許については第14章でくわしく扱います。
無線従事者の免許は総務大臣から受けます。受けられるのは、国家試験に合格した人のほか、総務大臣の認定を受けた養成課程(講習会)を修了した人などです(電波法第41条第2項)。この教科書は国家試験の合格を目標にしていますが、内容は養成課程で学ぶ範囲とも重なります。
1.2 試験の形と合格基準
4アマの国家試験は、日本無線協会が実施しています。現在はCBT方式(全国のテストセンターでコンピュータの画面上で解答する方式)で、年間を通じて受験できます。
| 科目 | 問題数 | 配点 | 合格点 |
|---|---|---|---|
| 無線工学 | 12問 | 60点 | 40点 |
| 法規 | 12問 | 60点 | 40点 |
- 試験時間は2科目あわせて1時間です。
- 問題は、4つの選択肢から正しいものを1つ選ぶ四肢択一式です。
- 12問で60点なので、1問は5点です。合格点の40点は12問中8問にあたります。
注意したいのは、合格点は科目ごとに決まっていることです。無線工学で満点(12問)を取っても、法規が7問(35点)なら法規が不合格になり、試験全体として合格できません。2科目とも同じ回の試験で8問以上正解する必要があります。
逆に言えば、各科目で4問までは間違えても合格できます。苦手な分野があっても、確実に取れる分野を広げていけば十分に届く試験です。
1.3 出題範囲はどこで決まっているか
試験科目と出題範囲は、無線従事者規則の第5条で資格ごとに決められています。4アマについては次のとおりです。
- イ無線工学
- (1)無線設備の理論、構造及び機能の初歩
- (2)空中線系等の理論、構造及び機能の初歩
- (3)無線設備及び空中線系の保守及び運用の初歩
- (1)
- ロ法規
電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
無線工学の(1)は送信機・受信機・電子回路・電源など、(2)はアンテナ(空中線)と給電線、電波の伝わり方、(3)は混信や電波障害への対策、測定器の使い方などにあたります。この教科書では第2章〜第10章が無線工学です。
法規の「命令」とは、法律(電波法)にもとづいて行政機関が定めるきまりのことです。電波法を中心に、次のような政令・省令が試験の範囲に入ります。この教科書では第11章〜第16章が法規です。
| 名前 | 主に決めていること |
|---|---|
| 電波法 | 法律本体。目的・定義、無線局の免許、無線従事者、運用、監督 |
| 電波法施行令(政令) | 無線従事者の資格ごとの操作の範囲 など |
| 電波法施行規則 | 用語の定義、周波数帯の区分、空中線電力の表示、備付け書類 など |
| 無線局免許手続規則 | 免許・再免許の申請の手続 など |
| 無線従事者規則 | 国家試験、免許証の交付・再交付・返納 など |
| 無線局運用規則 | 呼出し・応答の手順、アマチュア局の運用のきまり など |
| 無線設備規則 | 電波の質(周波数の許容偏差など)や設備の技術基準 |
さらに、同じ無線従事者規則第5条の第2項には、出題は電波法施行令第3条に定める操作の範囲を考慮して行うと書かれています。つまり、4アマが実際に扱う周波数・電力・電波の型式に関係する内容が中心に出題されます。その「操作の範囲」を次の節で見ていきます。
1.4 4アマの操作の範囲
アマチュア無線技士の資格ごとに、操作できる無線設備の範囲が電波法施行令第3条で決められています。4アマについての規定は次のとおりです。
アマチュア無線局の無線設備で次に掲げるものの操作(モールス符号による通信操作を除く。)
- 一空中線電力十ワット以下の無線設備で二十一メガヘルツから三十メガヘルツまで又は八メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するもの
- 二空中線電力二十ワット以下の無線設備で三十メガヘルツを超える周波数の電波を使用するもの
空中線電力とは、送信機からアンテナ(空中線)に供給される電力のことで、送信の強さの目安です。整理すると、4アマが操作できるのは次の3つの範囲です。
| 周波数 | 空中線電力 | アマチュアバンドの例 |
|---|---|---|
| 8MHz以下 | 10W以下 | 1.9MHz帯、3.5MHz帯、3.8MHz帯、7MHz帯 |
| 21MHz〜30MHz | 10W以下 | 21MHz帯、24MHz帯、28MHz帯 |
| 30MHzを超える | 20W以下 | 50MHz帯、144MHz帯、430MHz帯、1200MHz帯 |
ポイントは、8MHzを超え21MHz未満の周波数が抜けていることです。たとえば10MHz帯、14MHz帯、18MHz帯は4アマでは操作できません。また、どの周波数でも空中線電力の上限は10Wか20Wなので、50Wの無線設備は4アマの範囲を超えます。さらに、モールス符号による通信操作(電信)は4アマの範囲から除かれています。
参考に、ほかのアマチュア無線技士の操作の範囲も並べておきます。
| 資格 | 操作の範囲(電波法施行令第3条) |
|---|---|
| 第一級 | アマチュア無線局の無線設備の操作 |
| 第二級 | 空中線電力200W以下の無線設備の操作 |
| 第三級 | 空中線電力50W以下の無線設備で18MHz以上又は8MHz以下の周波数の電波を使用するものの操作 |
| 第四級 | 上の表のとおり(モールス符号による通信操作を除く) |
1.5 周波数と波長
電波は、電界と磁界が振動しながら空間を伝わる波です。1秒間に振動する回数を周波数 f といい、単位はヘルツ(Hz)です。1回の振動のあいだに電波が進む距離を波長 λ(ラムダ)といい、単位はメートル(m)です。
電波は真空中を光と同じ速さ c(約 3×108 m/s、1秒に約30万km)で進みます。1秒間に f 回振動するあいだに c だけ進むので、1回ぶんの長さ(波長)は次の式で求められます。
周波数をMHz(メガヘルツ、106 Hz)で表すと、3×108 ÷ 106 = 300 なので、次の形がとても便利です。試験の計算はほとんどこれで足ります。
計算例
- 7MHz:300 ÷ 7 ≒ 42.9 m
- 21MHz:300 ÷ 21 ≒ 14.3 m
- 50MHz:300 ÷ 50 = 6 m
- 145MHz:300 ÷ 145 ≒ 2.07 m
- 波長 0.7m の周波数:300 ÷ 0.7 ≒ 429 MHz(430MHz帯)
式からわかるように、周波数と波長は反比例します。周波数が2倍になれば波長は半分、周波数が1/2になれば波長は2倍です。
アマチュア無線では、バンド(周波数帯)を波長のおおよその値で呼ぶ習慣があります。7MHz帯の波長は約43mなので「40m帯」、144MHz帯は約2mなので「2m帯」と呼ばれます。
| バンド | 波長の目安 | 波長での呼び名 |
|---|---|---|
| 3.5MHz帯 | 約86m | 80m帯 |
| 7MHz帯 | 約43m | 40m帯 |
| 21MHz帯 | 約14m | 15m帯 |
| 28MHz帯 | 約11m | 10m帯 |
| 50MHz帯 | 6m | 6m帯 |
| 144MHz帯 | 約2.1m | 2m帯 |
| 430MHz帯 | 約0.70m | 70cm帯 |
波長の計算は、第8章のアンテナ(半波長ダイポールなど)の長さを求めるときにそのまま使います。ここで確実にできるようにしておきましょう。
単位の接頭語
無線工学では、とても大きい数ととても小さい数が出てきます。次の接頭語は、指数に直して計算できるようにしておくと便利です。
| 記号 | 読み | 倍率 | 記号 | 読み | 倍率 |
|---|---|---|---|---|---|
| k | キロ | 103 | m | ミリ | 10−3 |
| M | メガ | 106 | μ | マイクロ | 10−6 |
| G | ギガ | 109 | n | ナノ | 10−9 |
| T | テラ | 1012 | p | ピコ | 10−12 |
たとえば 1MHz = 1,000kHz = 1,000,000Hz です。
1.6 周波数帯の区分
電波法施行規則第4条の3では、電波の周波数を9つの周波数帯に分け、それぞれに略称と「メートルによる区分」の名前を付けています。
| 周波数の範囲 | 略称 | メートルによる区分 |
|---|---|---|
| 3kHzをこえ 30kHz以下 | VLF | ミリアメートル波 |
| 30kHzをこえ 300kHz以下 | LF | キロメートル波 |
| 300kHzをこえ 3,000kHz以下 | MF | ヘクトメートル波 |
| 3MHzをこえ 30MHz以下 | HF | デカメートル波 |
| 30MHzをこえ 300MHz以下 | VHF | メートル波 |
| 300MHzをこえ 3,000MHz以下 | UHF | デシメートル波 |
| 3GHzをこえ 30GHz以下 | SHF | センチメートル波 |
| 30GHzをこえ 300GHz以下 | EHF | ミリメートル波 |
| 300GHzをこえ 3,000GHz(3THz)以下 | ― | デシミリメートル波 |
境目の数字はすべて「3」と「10倍」の組合せでできています。4アマの試験でよく出るのは太字のMF・HF・VHF・UHFです。アマチュアバンドに当てはめると、次のようになります。
- MF:1.9MHz帯
- HF:3.5MHz帯、7MHz帯、21MHz帯、28MHz帯
- VHF:50MHz帯、144MHz帯
- UHF:430MHz帯、1200MHz帯
「メートルによる区分」の名前は、その帯の波長の桁から来ています。たとえばHFの波長は10m〜100mで、10倍を表す「デカ」を付けてデカメートル波、VHFは1m〜10mなのでメートル波です。
また同じ条の第1項では、周波数の書き方も決めています。3,000kHz以下はkHz、3,000kHzをこえ3,000MHz以下はMHz、3,000MHzをこえ3,000GHz以下はGHzで表示します(周波数の使用上特に必要がある場合を除く)。そのため、1.9MHz帯の周波数は書類上「1,910kHz」のようにkHzで書かれます。
- 無線従事者
- 無線設備の操作又はその監督を行う者で、総務大臣の免許を受けたもの(電波法第2条)。
- 空中線電力
- 送信機からアンテナ(空中線)に供給される電力。電波の型式によって表し方が決まっている(第13章)。
- 操作の範囲
- 資格ごとに操作できる無線設備の範囲。電波法施行令第3条で決まる。
- 周波数 f / 波長 λ
- 1秒間の振動の回数〔Hz〕/1回の振動で進む距離〔m〕。λ = c/f。
- 無線工学・法規とも12問・60点満点・合格点40点(8問)。科目ごとに合格点が必要。
- 4アマの操作の範囲:10W以下で21〜30MHz又は8MHz以下、20W以下で30MHzを超える周波数。モールス符号による通信操作を除く。
- 「21MHz以上(30MHzまで)又は8MHz以下」が正しく、「8MHz以上21MHz以下」は逆。14MHz帯・18MHz帯は操作できない。
- λ〔m〕= 300 / f〔MHz〕。周波数と波長は反比例。
- MF 300kHz〜3MHz、HF 3〜30MHz、VHF 30〜300MHz、UHF 300MHz〜3GHz(いずれも「をこえ〜以下」)。